環境が整えば、『劣化』しながら『熟成』する
『少女から女性へと成長する』
ワインの熟成はこのように例えられます。
お酒に性別があるかどうかは別にして(笑)、いい表現です。
長期間熟成を経たワインは、香りに深みがあり、色合いはブラウンに近く
味わいは、栓を開けた瞬間からどんどん変化をしていきます。
澱(おり)という沈殿物があり、それをうまく避けながらグラスに注ぐ技術と時間を要します。
正に女性を丁寧に扱うがごとく、少女の殻をボトルに残したままで、
ゆっくりと味わう。
高級ワインの醍醐味です。

で、です。
これ、なんで高額なのって話なんですが。
長いこと置いとかないと、渋すぎたり酸っぱすぎたりして、飲みにくいワインとなっている場合が多く、
『劣化』(←酸化)させて、全体的に味を鈍くしてしまわないと厳しいんです。
当然、ずーっと寝かせておくので、液量は減りますし、電気代(場所代)は掛かりますし、
管理だって大変です。
目減りした分も、しっかり原価換算しますから。
高額になって当然です。
サーブ(注ぐ)する技術も必要ですしね。
ちゃんと貯蔵庫で『熟成』という名の、素晴らしい『劣化』をさせて、
飲み頃を見計らって商品化されるワインは、
飲む人に感動すら与えます。
では、どういった酒が『熟成』していて、逆に悪い意味での『劣化』をしている酒なのか。
今回は醸造酒に絞ってご説明いたします。
酒類別熟成期間の見分け方(醸造酒編)

日本酒(濁酒除く)
日本酒は世界で一番難しい造りをされているお酒です。
その繊細さは酒類の中で一番といってもいいでしょう。
『劣化』すると黄色っぽくなり、味わいは甘くなります。
これが進むと、黄色が強くなり、だんだん酸味を増すものもあります。
飲めなくなることはありませんが、風味は落ちます。
あえて冷暗所での『熟成』を目的としたお酒もあり、
そう言ったお酒は、やはり液体は黄色く、非常に甘口に仕上がります。
これはこれで、とてもおいしいです。
ただ、『樽酒』として売られている日本酒は、樽の香りと色が付くので
杉の香りがして、液体は黄色くなります。
たまーに、これでクレームが店に入ることがあるのですが…
じゃあなんで、わざわざ樽酒買ったんだよ!って言いたくなりますね…

ワイン(SP、酒精強化は除く)
ワインはその果皮自体に酵母が存在しているという事もあり、
最も原始的なつくられ方をしています。
樽の中に葡萄を入れて、踏みつければ出来上がるといった感じです。
しかし、それだけに歴史は非常に古く、その蓄えられた知識と技術、
最新鋭の機材をもって、世界中のどこでも作られるような世界基準のお酒になりました。
赤ワインは造られたばかりだと、色はピンクに近い赤。香りは花のようで、酸味が強くなります。
店頭に並ぶのは2年くらい寝かせた後になるものが多いようです。
強すぎる酸と香りは落ち着き、色は濃くなります。
葡萄の個性と風土と管理者の技術によって様々に変わりますが、
店頭にあるものが飲み頃と思って大丈夫です。
劣化すると、香りが少なく、渋みや酸が逆にたつものもあります。
色はレンガ色に近づきます。
これを逆手にとって、酸が強く、強い渋みをもち、香りを強く作れば
寝かせるほどおいしいワインの出来上がりです( ´∀` )
ただコストは相当かかりますし、飲み頃の見定め、澱の除去等の技術も必要となります。
子どもの生まれ年のワインを…と考えた方。
私と同じです(笑)。
はたしてそこまで置いておけるスペースと電気代が持つのかどうか。
そもそも、ちゃんとサーブできるのか、子どもがその良さを理解できるのか。
考えてみましょう。
赤ワインの新酒を飲みたい方は、ボジョレーヌーボーを。
またそれについては書きますが、ボジョレーヌーボーは、ボジョレーヌーボーです。
値段で他と比較するのはやめましょう。

また白ワイン(ロゼ)ですが、これの『劣化』は日本酒と近いものになります。
赤もそうですが、白は特につくられる地域の特色を強く受け継ぐような印象です。
果皮を取り除いて造られるため、葡萄本来の味が際立つためでしょう。
『劣化』すると、色合いが濃くなり、酸味が落ちます。コクが強くなる為、
爽やかに飲むには向かなくなります。
これも『熟成』をさせる目的で作れば、極甘口のワインが仕上がります。
これはこれで大変高価です。半端ないです。
蜂蜜を飲んでいるかのような味わい。色は濃く、濃厚です。
ワインは、ちょっと、色々難しいので、別で所見を書きます。
難しいです。ワインとそれを取り巻くモノが。

ビール(発泡酒、新ジャンル除く)
恐らく、日本人が最も古くなるのがイメージできないお酒ではないでしょうか。
確かにビールは鮮度が大切です。
ですが、このお酒の成り立ち上、貯蔵出来るようにできているのです。
教会が絡む話になりますので、歴史の話はまた別の機会に。
ビールが『劣化』すると、その種類にもよりますが、
一番強烈なのが、紙の香り、でしょう。
そして殆どの場合、どこでビールを飲んでもその香りはします…
基本的に日本で『劣化』していないビールは、
ビール工場でしか飲めないと思っていいです。
一方で、ベルギー等では10年以上、美味しく飲めるビールもあります。
ビールで『熟成』はあまり無いのですが、
年数が経った場合、泡は殆ど消えます。
しかし、味わいがまろやかになるものもあるのです。
私は子どもの生まれ年のビールを買いました。
20年後が楽しみです( ´艸`)
飲むシーンが大切。値段は目安と考えて
その日の疲れを癒すために、ぐびっと飲んでしまいたいとき、
グラスに注いで、香りが開くまで待って…
なんてしていられないでしょう?
逆に、大切な人とゆっくり食事を楽しみたいときには
早飲みのお酒ではなくて良いはずです。
『熟成』されたお酒は、楽しむのに時間がかかる場合が多いので、
サッと飲むなら、手軽な価格のもの(金額の目安は1,000円以内)。
ゆっくり飲むなら、ある程度のもの(金額の目安は3,000円以上)。
あとは、その酒に思い入れがあるかどうかなど、人によるはず。
嗜好品ですから、知識はある程度にして、楽しみを優先しましょう!
『劣化』は『酸化』。風味が落ちたお酒は別の事に使用して、無理しないで下さい。
醸造酒はお酒のペースに合わせて飲むのが大切。でも主役はあなたです!